塗装作業に入る前に各パネルに使う塗料の調色と、パネルの塗り分けラインを決めます。前回にも書きましたが、今回発表するものはあくまでも私、高橋の手持ち資料から推測した物で、撮影用モデルを実際に見て決めたものではありません。また、撮影用モデルよりもスケールが小さいぶん、スケール・エフェクト(対象物が小さくなれば、空気遠近法によりカスレが生じるので対象物が白っぽくなる)の効果が加わるので、オリジナル塗料をそのままキットに塗れば良いという事にはなりません。また最後に汚し塗装を施しその際に色が変わるので、そのぶん各色を明るめに調色する必要も出てきます。
 という事で私がファルコン船体の基本色としてガイアノーツ・カラーを調色して作った色が、写真の上側パネルです。使用したカラーは大瓶EX-ホワイトに純色イエローを混ぜるのですが、EX-ホワイトは青味が強いのでイエローを混ぜると発色が若干グリーン味に振れてしまいます。そこで補色として純色のマゼンタを少し加え、色味をイエロー系に戻します。さらに色の彩度を抑えるためにフラットブラックを加え、落ち着いた色にします。下側の3色は対比として参考用に塗った色で、左からガイアノーツカラーの大瓶EX-ホワイト、バーチャロンカラーのウォームホワイト、クレオス社のミスターカラーC338ライトグレー。
ガイアノーツ・カラーを使った理由は隠ぺい力の高さと、そして何よりガイアノーツのEXシリーズは大容量である事。なにせ全長48センチにもなるこのキット、その分塗料も大量に消費します。基本色は最低でも大瓶で4,5本分の容量(200ml)は作っておいた方が安心できます。さらに塗り分ける各パネルもこの基本色をメインに使いますので、基本色は大量にあるほど安心です。
 写真は左より、船体基本色、基本色に茶色を混ぜたAパネル、基本色に青色を混ぜたBパネル、Aパネル色に黒味を加えたCパネル、Bパネルにやはり黒みを加えてDパネル、茶色と赤を混ぜて作った(E、F色はボツになった)Gパネルとなってます。本来なら各色を作る際の配合比等も書ければ良かったのですが、すでに調色したのは1年以上前、写真を見ながら各色を少しずつ加えていったため、「正確な配合比は良く分からない」というのが正直なところです。スイマセン・・・。サンプルの色を塗り終えて、C色はもう一段階明るくても良かったかなと思いますので、これから調色する人はそのようにお作り下さい。
ファルコンの塗装を行う方法として、最初に基本色を機体全体に塗り、それから各パネルの周囲をマスキングしてパネルを塗り分ける方法と、各パネルを最初に塗り、パネルごとにマスキングを繰り返し最後に機体色を塗る方法の2通りがあります。前述の方法は、各パネルのマスキングに膨大に時間が掛かりますが、塗装面がきれいに仕上がること。後述の方法はマスキングは楽なのですが、パネルの周囲に霧状の塗料のミストが付きやすい(表面がザラザラになる)ので、その都度注意して除去しなければならないこと。以前制作した塗装見本のキットは、すべて前記の方法で塗装したので、今回は後記の方法で行いました。結果的には、同じ作業を繰り返すマスキング作業が軽減されたので(その分ミストを除去する作業が増えたけど)少しは楽だったかなぁ?程度の差異しかありませんでした。写真は船体上面A色パネルの塗り分け図。右上に並んでいる塗料は左上がパネル色。左下は船体の基本色。右は参考用の市販色。
こちらは船体下面A色パネルの塗り分け図。A色は船体基本色に、ガイアノーツ社のナチュラルブラウンとフラットブラックを少量混ぜて濃いウォーム・グレーを目指して調色した色。しかし、最後の汚し塗装を施すと基本色との差がなくなりやすいので、それも考慮に入れて基本色との差をつけると良いだろう。
一番塗り分けの多いB色パネルの船体上面図。この色は船体基本色に純色シアンを少量混色して基本色をブルーグレー系に振った色。この色の特徴は、左船体のパネル塗り分けラインがパネルの分割ラインとは一致しない箇所が何か所かある。特に後方の塗り分けはパネルとは全く一致していないので注意が必要。また右後部は、外周の周囲にのみこの色が塗られているパネルもある。
船体下面も塗り分けパネルが多いので良く確認して下さい。私も「塗り終えた~」と思っていたらいつも何枚かのパネルを塗り忘れております。船体の左前方(画面では前方下側)にはパネルラインとは異なる部分的な塗り分けがあります。
C、G色パネルの船体上面の塗り分け図です。C色はA色にフラットブラックを加えさらに黒みを増した色。G色は戦車用の錆止めカラーの色味が近く、もう少し赤味が増した色という感じで、写真の右上にあるのが色見本です。船体の中央より左前側の一部に、B色のパネル内の一部をC色に塗り分ける部分がありますが、この枠内のC色はA色との中間色のような色なので白を20%ほど足して、明るいC色にしています。ここも写真によって違って見えるので判断が難しい色なのですが・・・。
船体下面のC、D色パネルの塗り分け図です。ここは特に難しい塗り分け箇所のパネルはないと思います。
グレーのD色パネル船体上面の塗り分け図です。この色もガイアノーツカラーのニュートラルグレーⅡに極少量の純色イエローとフラットブラック、EXホワイトを入れて調色しました。若干黄色味のあるダークグレーといった色味でしょうか?右にあるクレオスの色サンプルC338番より若干濃いグレーです。
このD色よりもさらに明るい色「D1グレー」(D色に30%ほどホワイトを加えた色)も、左前方のパネルや下面の一部に使われています。
 また6か所ある円形の放熱口の周りには明らかに円形を強調するように、所々にススを思わせる黒が塗られています。その位置も図に示しましたので、参考にして下さい。
D色パネルの下面塗り分け図。コクピットの下側と前方中央部、センター寄りの小さいパネルにうっすらとD1色が塗られた部分があります。また右側面リングの塗り分けはパネルラインに沿っていないので、ご注意下さい(赤いラインがパネルの分割ライン)。
側面左右にあるリング部の塗り分け図です。なぜかD色のみがパネル分割ラインを無視して直線で塗られています。また図にはありませんが、右側リングの下面は激しい弾痕跡があり大きな穴も開いています。さすがにこの部分は各自の好みがあるだろうと、このキットでは再現されていないので拘るモデラーは技術(腕前)の見せどころでもあります。またコクピットの筒状パーツの側面にはうっすらと薄くD色が塗られています。その筒の後ろ側には、見にくいのですが小さい赤いマーキングがあります。幸いな事にデカール190番が予備のデカールとして1枚余りますので、色も形もだいたい同じなのでそれを貼って下さい。
コクピット円錐部とレーダー裏面の塗り分け図です。コクピットはミレニアム・ファルコンの顔とも言える部分で、その周囲は念入りに塗り分けられています。またD色で塗られた円筒部の折れ曲がった部分の塗り分けは、パネルラインと合っていませんので図を参考に塗り分けて下さい。
 次にレーダー裏面のD色の塗り分けですが、現存する撮影モデルのレーダーは上下が入れ替わっており正規の位置ではありません。どういう事かと言うと、現在の位置からパラボラ部のみを「く」の字の支点から後ろに回転させ、その状態で今度は下の土台ごと180度回転させると、この図と同じ正規の位置に戻ります。なぜ正規の位置に戻さないのか不思議なのですが、もしかするとすでに固定されて動かないのかもしれませんね。
 最後は搭乗ボックス右上面に貼るデカール191番についてですが、組み立て説明書を見ても貼る位置がどうにもわかりづらい。そこで補足の意味で「この位置ですよ」というのを図に示しておきました。この図は作図上後ろ側ですが、前側に取り付けるS1ランナーのパーツナンバー11のこの図と同じ位置にデカールをお貼り下さい。
では実際に塗装していきますが、実は先にあげた各パネルの塗り分け図は、写真だけでは各パネル塗装の違いがわかり辛いだろうと、塗装した後に描いたもので塗装中の写真と一部塗り分けが違っています。もちろん塗り分け図を書いた後は、修正して再塗装してありますので、参考にする際は図を優先して下さい。
まずは塗り面積が一番広いB色パネルから塗り始めました。写真は船体の上面です。すでにこの時点で右前方のパネルを塗り忘れていますね。
船体の下面を塗装します。Bパネル以外の周りに塗料が掛かっても気にしないで、しっかり発色させます。続いてA色を吹塗りますが、先に塗ったB色をマスキングする箇所が少ないので、どんどん塗装を進めます。
さらに、D、C色の順で塗装します。この順で塗装するとパネルごとにマスキングする作業が最低限で済みます。G色を塗装するには、さすがに今まで塗装したパネルをすべてマスキングする必要がありますので、ここからマスキング作業に突入します。実はこのマスキング作業自体は難しくないのですが、漏れがないように丁寧に行う必要があり注意深く行うと、まるまる一日がマスキング作業でつぶれるくらい時間が掛かります。ここは焦らずに慎重に行って下さい。写真はマスキング途中の船体上面で、コクピットのある筒状パーツは取りはずして別々に塗装します。
同じくマスキング作業途中の船体下面。上下の船体を同時進行で個別にマスキングするので、各パーツの保管場所を確保するのが大変です・・・。黄色く見えるのはマスキングテープ。このマスキングテープですが、日曜大工センター等に行けば、模型用と同品質で幅広の物が安く売っているので、皆さん近くのDIYショップ等を覗いてみて下さい。
各パネルをマスキングしたら、ミスト部分が気になったのでここで一度修正作業を行います。エアブラシで塗装を行うとどうしても塗装面の周囲に霧状の塗料の粉末が飛散し、塗装面以外がザラザラになってしまいます。本来であればそうならないように、塗装面以外をすべてマスキングするのですが、ファルコンのような大きなキットですとマスキング事態に時間が掛かるため、今回は省略して作業しています(皆さんはこんな手抜きをしないで、時間を掛けて作業して下さい)。もし、このように表面がザラザラになってしまった場合は、耐水ペーパー(紙やすり)の1200番か1500番で水を付けて磨いて、表面をツルツルに戻します。この時にあまり強く磨いて下地のサーフェイサーまで磨き取らないように注意して下さい。特に奥まった部分はミストが飛散しやすいので、機体全体をくまなく確認します。
ミストを取り除いたら、G色を塗装します。こちらは船体上面。排気ダクトのある後部はなぜか途中写真を撮り忘れました、スイマセン。
こちらはG色を塗り終えた船体下面。このあと再びミストを乗り除き、G色パネルをマスキングして船体全体に基本色を吹き付けます。
基本色を吹き終えた上面。コクピット部を相変わらず撮り忘れている・・・。
途中写真を撮り忘れていきなり塗装が完了している上面後部。
同じく基本色を塗り終えた船体下面。なお写真では解りにくいが、塗装する際は色を均等に塗るのではなく、むしろ小さい塗りムラがあるように塗装すると、リアル感が増します。
船体を乾燥させている間に、同じく基本色で塗装する細かいパーツも塗っておこう。まずはコクピットの脇に取り付けるスリット状のエッチングパーツ。下地にプラ板をひいてメタルプライマーを塗装するが、この場合はエッチングパーツの面積が小さいので、筆を使った手塗りでも筆ムラが気にならないので十分だろう。
もちろん基本色はエアブラシを使って塗装する。このパーツはコクピットの円筒形に沿って曲げるので、あまり塗料を厚吹きしないように注意すること。
次にコクピットとターレット銃座のクリアーパーツを塗装します。まずは表側に大きめにカットしたマスキングテープを貼り、窓枠の凹凸モールドのミゾに合わせて爪楊枝を使ってマスキングテープを馴染ませます。キレイに馴染んでマスキングテープ上にクッキリと下のモールドが現れたら、モールドに合わせてデザインナイフを使ってカットしていきます。丸い部分に関しては市販のサークルカッターを使い円の直径に合わせて切り出します。裏側は幅広のマスキングテープを大きめに貼り付け、塗料の侵入を防ぎます。
船体と同じく、下地にクレオス社の黒いサーフェイサー1500の缶スプレーを吹いてから、基本色を塗装します。乾燥させたらマスキングテープを剥がし、クリアーパーツにキズが付かないようにビニール袋等に入れて保管します。
船体の基本塗装を終えてから1時間もすれば塗料が乾燥する(この乾燥の速さがラッカー系塗料の強みです、ただし臭くて有害なのでマスクは必須)ので、マスキングテープを剥がして全体の色のバランスを確認します。塗装が終了した船体上面。このあと汚し塗装を加えるので、もう少しB色パネルに青味があっても良かったかも?
こちらもマスキングを剥がした上面後部。アップで見ると、細かくチマチマと穴を開けた部分に影が落ちており、このあと汚し塗装を加えるとさらに立体感がアップしこのキットの見所となるハズ。
こちらは完成した船体下面。とりあえず突出した色味のパネルもなく、思い通りの塗り分けが完成した。ミレニアム・ファルコンの場合はこのあと汚し塗装が加わるので、ようやくここまでで塗装工程の半分が終了した感じだ。ここからは雨だれや、錆垂れ、弾痕跡等が加わるので、完成までにはもうひと頑張りと言ったところ・・・。
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