連載 第6回
今月はマーキングデザイン、パッケージデザインに注目。パッケージイラストの制作過程や、デカールを貼ったテストショットを撮り下ろしで紹介しよう!
MG ゼータガンダム Ver.Ka
●発売元/BANDAI SPIRITS ホビーディビジョン クリエイション部
●7150円、2023年4月29日発売予定
●1/100、約18cm●プラキット
MESSAGE:
BANDAI SPIRITS
ホビーディビジョン パッケージ担当
カトキさんとのやり取りは、長い期間、じっくりゆっくりと進めていく感じです。今回のギミックやテーマポイントの視点や、過去フォーマットの視点などを踏まえまして、ゼータガンダムで言うとMSのプロポーションはもちろん、変形後のWR(ウェイブ・ライダー)を効果的に見せたいこと、縦や横などの絵の収まりも含め検討していきます。特にフォルム、シルエットの美しさを大事にしています。最初は仮CGテイク、ポーズ調整、などを提案、指示などを何度かやり取りし、CGポーズに関してもアングルハント(カメラで狙う)するイメージで微妙に異なる角度でいくつかトライアル試作を行い、納得のいく印象に高めていきます。
期間は数ヵ月にわたり、細かく数えると10数回くらいは、キャッチボールを重ねて仕上げていくイメージですね。これからも多くのファンに親しまれるように願っています。
カトキ氏によるMSポーズ修正案
最初に上がってきた、MS形態のポーズイラストに対するカトキ氏の修正案。顔が襟パーツに隠れすぎてしまっているので、ZZガンダムのパッケージを参考にカメラ位置を上げて、もう少し見えるように。ヒジが曲げすぎで、ここまで力強く見えない程度の曲げ具合に。νガンダムのパッケージを例に挙げている。シールドが上がりすぎてパッケージでは先端が隠れてしまうため、マウント位置を下げる提案がされている
基本と俯瞰アングルの比較/修正:基本と俯瞰、最終調整の比較
カトキ氏の修正案を反映したポーズ2案。顔の隠れ、ヒジの曲がり具合が修正されただけでなく、アングルも微妙に変えてある。左の比較画像はピンクが基本、緑が俯瞰。俯瞰は基本よりもカメラ位置が上がっている。さらにカトキ氏の監修を受けて、アングルが調整された数パターンを提案。場合によってはパーツ単位で見え方の調整が行われている
最終調整版ではカメラ位置が上がり、さらにマスクが見えるようになった。身体の向きは正面気味に調整され肩関節が隠れている。隠れていたフライング・アーマーの末端が最終調整版では見えており、先端もより見えるようになっている
カトキ氏によるWRポーズ修正案
CGイラストのWRポーズ案
最終調整済みのWRポーズ
左が背景のウェイブ・ライダー(WR)のポーズ案。初期段階ではパッケージのレイアウトが未定のため、さまざまなアングルが提案されている。MS形態との組み合わせを確認し、C案の方向に決定。右の修正案では翼の先端がMS形態に隠れず(右脚横の丸囲み)かつ、つま先とスタビライザー(右端の丸囲み)が切れてしまわないようにアングルを工夫する提案がカトキ氏からされている
カトキ氏によるパッケージのレイアウト案
横長:A案/縦長:A案
横長:B案/縦長:B案
横長:C案/縦長:C案
縦横のサイズはウイングガンダムゼロ(EW)Ver.Kaと同じ。横長レイアウトはウイングゼロのような横に広がるデザインだと全体をうまく収められ、余白を活かせば高級感も演出できる。横長3案はWRのアングル、大きさが異なる。A案とB案は余白感はないが、メインのMSよりも目立ってしまっている。C案はWRが主張しすぎずMSとのバランスも改善されているが、余白が広い印象が拭えない。縦長のレイアウト3案はWRの位置がそれぞれ異なる。検討した結果、今回はMSの収まりのよさと余白のバランスから縦長のレイアウトC案をベースに仕上げられた
完成パッケージデザイン
最終調整済みのCGイラストに商品と同じ位置へマーキングが貼り込まれ仕上げられている。MS形態の周囲にできた余白にWRが収まるように調整されているのがわかる。ガンプラの箱は〈黒〉が大半の中、Ver.Kaの〈白〉パッケージはサイズは変われど、20年間変わらず鮮烈な印象を与え続けている
ゼータガンダムVer.Kaのマーキングデザイン
ゼータガンダムVer.Kaの水転写式デカール
バンダイホビーサイトなどで公開されている商品画像を確認すると、これまでのVer.Kaアイテムと比べて大判のマーキングが少ない印象。今回のコンセプトがアニメオリジナルデザインの追求であるため、マーキングは控えめにデザインされているものと思われる。水転写式デカールには、シールドやスタビライザーなどに貼る大判マーキングも用意されているので、好みで選択できる
ダブルゼータガンダムVer.Kaのマーキングデザイン
ダブルゼータガンダムVer.Kaの水転写式デカール
ゼータガンダムとダブルゼータガンダムは「Z計画」により生み出された兄弟機で、開発年代も近く、同じアーガマ所属という設定。そのバックボーンを踏まえて、ゼータガンダムのマーキングはデザインされている。エゥーゴのマークや「AG」、型式番号のフォントはダブルゼータガンダムのものを踏襲していることがわかる
νガンダムVer.Kaのマーキングデザイン
νガンダムVer.Kaの水転写式デカール
ゼータガンダムとνガンダムは同じアナハイム・エレクトロニクス社製であるが、開発年代も離れ所属艦も異なるため、マークなどデザインが異なる
デカール貼り済みテストショット
今回はテストショットに水転写式デカールを貼り、ツヤ消しトップコートを吹いている。全身に貼られたマーキングが、成型色で再現された全身のディテールと相まって情報量が増している。シャープな造形によりスミ入れをしていなくても、パーツの陰影がクッキリと浮かび上がっている
今回の撮り下ろしではVer.Kaらしい大判のマーキングを、肩、シールド、スタビライザーの側面に貼っている。胸元の「VMsAWrs」のマーキングは、「Variable Mobile suit And Wave rider system」の略。ゼータ系MSに共通で貼られている。「AG」はアーガマの所属であることを表している
ランディング・ギア
MG Ver.1.0ではパーツの差し替えで再現していたが、今回は差し替えなしで再現。修正案では、主脚やスキッドの基部にショックアブソーバーなど装置類をイメージさせるディテールが描き込まれている
フライング・アーマー
フライング・アーマー断面の凸部が単純な長方形になっていたため、修正案では段差と多角形を組み合わせたディテールを追加している
フライング・アーマーの側面に段差ができてしまい、TV版の流れるようなシルエットとは違っていたため、段差を修正。主翼の基部とスライドする部分にできる段差をナチュラルに見せる工夫も提案されている
ロングテール・スタビライザー
スタビライザー基部の裏側は隠れて見えない部分であるが、修正案ではシリンダーやダクトの構造を思わせるディテールを追加。変形させるなかで見えてしまう部分にも気が配られている
MS形態でスタビライザーと主翼を展開するのは、TV放送当時の版権イラストでも見られた構図。シルエットが広がり様になる
ビーム・ライフルは銃身がスライドし、縮めて前腕のマウントラッチに装着できるのは設定どおり。ビーム・サーベルは腰部サイドアーマーに収納できる
シールドの大判デカールが映える。大判デカールを段差のある面にまたいで貼るのは難しいが、軟化剤や綿棒などを使えばきれいに貼ることができる
※掲載している開発画稿は準備稿です。実際の商品とは異なります。