始まりと、13年の集大成と
カトキハジメ氏が長年プロデュースを務めてきたMG Ver.Kaは、大小さまざまなチャレンジを行うフィールドでもある。開発はホビー事業部開発チームとカトキ氏とで進められていくが、どんな道程を辿っていくのだろうか。
ホビー事業部(以降、ホビー) まずは「このMSを商品開発したいです」とホビーからお話しさせていただきつつ、「こんなことをやりませんか?」と提案しています。そこからカトキさんと打ち合わせを重ねて、企画の方向性をブラッシュアップしていますね。過去の商品や思い出話など、かなり雑談に近い打ち合わせから始まり、実際に試作して、モノに落とし込んで詳細を詰めたりと多岐に渡るやり取りをさせていただいています。
初めて商品化されたユニコーンガンダムは、小説版デザインをベースに立体化された。最大のハードルである変身ギミックは、このキットですでに〈正解〉が導き出され、以降のキットの指標となった。各キットではノウハウが蓄積され、MGEXへと集約されていった
MGEX ユニコーンガンダムVer.Kaは、前回からのVer.2.0とも言える立ち位置で、より洗練されたキットになっている。このキットを開発するにあたり、カトキ氏がこだわっていたポイントはどこだろうか。
ホビー プロポーション、ディテール、可動、サイコフレーム表現とユニコーンガンダムを構成するすべてと言っても過言ではないです。というのも初商品化のMG 1/100 ユニコーンガンダムVer.Kaが発売されて、13年が経ち、各シリーズでユニコーンガンダムが商品化されています。そのため、それらを超えるものにしたいという思いをカトキさんからお聞きしていましたし、ホビー事業部も同様に、最高峰のユニコーンガンダムを商品化したいという思いでした。この思いこそがこだわりだったと感じております。
そのカトキ氏のこだわりに対して、ホビー事業部開発チームはどう工夫して実現していったのだろうか。
ホビー はじめに各シリーズの良かった点や積み重ねてきた技術を整理して、商品に落とし込めるかどうかを検討しました。今回は電飾によるサイコフレームの発光と変身・可動機構の共立が大きなテーマとなっていますので、そこから取り掛かりましたね。MGやLIGHTING MODELを使用しながら試作品を工作し、プロポーションと変身・可動の目星をつけていきました。通常のガンプラ開発とは違い、はじめにモノで検証する時間が多かったですね。この作業がとても大変でしたが、ホビー事業部が蓄積してきた技術がかなり役立ち、それを道標にして今回の目的地に辿り着いた感じです。この開発ができたのも、今までの技術の積み重ねがあってこそ実現できたのだと感じています。
PGとRGを経て到達した発光表現とギミックの共立
これまで積み重ねたガンプラの技術を収斂して、今回のキットに惜しみなく注ぎ込んでいく。開発チームにも並々ならぬこだわりが詰まっている。
ホビー 一番のこだわりとしては〈劇中のシーンを再現をできるキットにしたい〉というのがありました。バナージが初めて搭乗し起動するユニコーンガンダム、デストロイモードへの変身、ニュータイプへの覚醒......など劇中で印象が強かったギミックをピックアップし、そこから紐解きながら商品仕様を検討して、発光、プロポーション、変身機構の共立、カーディアス・ビストのフィギュアの付属などを商品に落とし込んでいきましたね。
集光素材
MG ユニコーンガンダム Ver.Kaなどのサイコフレームに採用された集光素材は、特殊なライトを当てると発光する。しかし1色のみの再現で、暗がりで特殊なライトを当てなければ光らないという限定的なものであった
ガンプラ用LEDユニット
MG Ver.Kaだとサザビーが、LEDとボタン電池付きのライトユニットを内部にセットして、モノアイを発光させることができた。ただ、スペースの問題もあり、発光部分は狭い範囲に限られ、複数か所や広い範囲の発光には適していなかった
PG RX-0 ユニコーンガンダム用 LEDユニット
PGユニコーンガンダムのサイコフレームは特殊な樹脂で成形されている。LEDユニット(別売り)の光は青みを帯びており、光に反応した樹脂はそれ自体の色で発光する。発光色を変化させることはできなかった
LIGHTING MODEL
RG 1/144 ガンダムベース限定 RX-0 ユニコーンガンダム(デストロイモード) Ver.TWC (LIGHTING MODEL)は、3種類の発光パターンを再現した非可動式ディスプレイモデルであった。電池ボックスと配線を納めた専用のディスプレイベースが付属。全身の発光と色の変化を再現できたが可動が犠牲となってしまった
フレキシブルLEDシート
変化する発光演出と、可動&変身などギミックとの共立。それを実現させたのが、フレキシブルLEDシートである。フレーム内にフレキシブルLEDシートを組み込むことで、関節の可動を犠牲にすることなく、発光させることができる
画像はフレキシブルLEDシートの発光テスト時のもの。台座側のスイッチを押すことでLEDが赤から緑へと変化する
今回は、可動モデルにサイコフレームの発光と色が変化する演出まで盛り込んだ、高難度の取り組みとなった。
ホビー 苦労した点はすべてと言いたいところですね。あえて言うならば、電飾、プロポーション、変身機構の共立実現は当たり前に大変なことだと予想していましたが、その一歩先の検討は手探りでより一層大変でしたね。具体的には、サイコフレームがきれいに導光できるかということです。PGやLIGHTING MODELで発光再現できていない部分は改善したかったですし、よりきれいに発光させたいという狙いもありました。モノで試作してはデータにしてという工程を繰り返し、LEDの数を適切な数量で、点光りすることなく導光できるかを詰めていきました。その中でもシールド発光へのトライは一番時間がかかりました。シールド発光はなかなかうまくいかず、開発途中で『変形なしの発光するシールド』にしようかと迷ったぐらいです。何とか実現でき、今はやりきってよかったという思いです。
導光パーツでシールドにも光が伝播
シールド接続用の棒はクリアパーツ製の導光パーツになっている。前腕のパーツを差し替えてシールドを差し込むと、導光パーツからLEDの光が伝わり、シールドのサイコフレームにも光を行き渡せることができる
シールド・ファンネル用スタンド
スタンドの先端にはLEDが内装されている。スタンドと電源ボックスを兼ねた台座はコードで繋がり、離れていても発光が可能だ。シールド・ファンネルの発光はMGEXが初
MGEXユニコーンVer.Kaの開発を終えて、見えてきた次へのステップ、目指すものとはどんなものだろうか。
ホビー カトキさんもインタビューでおっしゃっていたように、今回でユニコーンガンダムを表現するためのギミックはほぼ踏破できたと感じています。ホビー事業部が蓄積した技術で、今回のMGEX ユニコーンVer.Kaが実現できたように、この開発で培った技術を次のガンプラに継承していきたいですね。ユーザーに支えられ、ガンプラは今年で40周年を迎えることができました。ガンプラの未来を考えたとき、ホビー事業部の技術の研鑽とユーザーの声は必要不可欠になると思います。今後も皆様に楽しんでもらえる商品を企画しておりますので、ご期待ください。