メカニックデザイナー海老川兼武氏スペシャルインタビュー

2022.06.30

メカニックデザイナー海老川兼武氏スペシャルインタビュー

HG 1/72 ブレイディファントムの発売を記念して、ブレイディファントムのメカニックデザインを担当された海老川兼武氏のスペシャルインタビューを公開!ブレイディファントムはもちろん、境界戦機作品のメカデザインについて伺いました。

メカニックデザイナー海老川兼武氏スペシャルインタビュー

Q1:今回の境界戦機という作品においてメカデザインで意識された部分がありましたらお聞かせください。

北米軍のAMAIM(以降アメイン)のデザインの話しを頂いた時、最初に羽原監督やスタッフの皆さんに確認したのが、主役機ケンブの意匠などを何処まで意識してデザインした方が良いのかという事でした。例えばケンブの特徴の一つでもある片持ち構造の関節など、この作品のアイデンティティーとして北米軍の機体にも採用した方が良いのか?などです。反応としては、異なる勢力なので避けた上で、自由にデザイン案を出してほしいとの事でした。ケンブ達と対峙する事が多くなる機体なのでシルエットなどが被らない様に、意識してデザインしたつもりです。ぱっと見、顔がないように見える特異な機体に見えるかもしれませんが、四股の関節などはオーソドックスな関節機構にしてあります。
北米軍はストークキャリーやホバーユニットを併用した俊敏な作戦行動で、他勢力よりも常に先手を取れる迅速さが特徴ですので、アメインもその辺りの設定感を引き立てるようにデザインしています。
商品都合という側面もないわけでもないのですが、基本ブレイディハウンドというベースの機体があり、用途や進化に応じてバリエーションを増やしていく感じの作業でした。ホビージャパンで進行中のフロストフラワーやストーリー後半の機体など、プロジェクト始動時にはまだ全体像が見えなかったので、背面のホバーユニットだけは取り外しが出来る仕様にして、バリエーションの展開が広げられる様にしておいて貰いました。アタッチメントでキャノン砲を付けたタイプや水中専用タイプなど様々な形態にも転用できる構造を仕込んでありますので、いつかお披露目できたら良いですね(笑)。
※月刊ホビージャパンにて連載。アニメ本編とは異なる舞台で、ストーリーを兵頭一歩氏が担当。

Q2:海老川さんが担当されたメカデザインで、1/72というスケールについて意識された点はありましたでしょうか。

この辺りは少々難しいところでして、模型用に1/72というスケールを意識してディテールやパーツを細かくし過ぎると、アニメの作画作業に負荷が掛かってしまうんです。例えばストークキャリーなども最初のラフではティルトローター式だったのですが、作画の作業軽減の為にVTOLタイプに修正しています。ただ模型用には1/72というスケール感を意識した追加のディテールをたっぷり入れていますので、是非商品を手に取って確かめていただけますと嬉しいですね。

Q3:主人公機が、KEN OKUYAMA DESIGNの手掛ける工業デザインアプローチの機体という部分で印象的でしたが、北米軍の機体デザインに影響はありましたでしょうか。

工業デザインというワードがかなり幅を持たせた表現なのでどう答えて良いものか難しいですが、主人公サイドと対峙する敵側の機体という意味では勿論影響はあります。ケンブがかなり特徴的なデザインになっていたので、こちらは奇をてらい過ぎない方向にまとめたつもりです。まあ兵器という工業製品(デザイン)であるのは他アメインも変わらないですよね(笑)。

メカニックデザイナー海老川兼武氏スペシャルインタビュー

Q4:ゴーストはKEN OKUYAMA DESIGNでデザインされ、大破したゴーストを北米軍が鹵獲したことで海老川さんが後継機であるブレイディファントムのデザインを手がけられています。
気遣われた部分などありましたらお聞かせください。

ゴーストという機体を無理やりブレイディフォックスに組み込んだものが、ブレイディファントムなので、あえて統一感を出さずキメラの様な異形の雰囲気を狙いました。戦闘スタイルも今までのブレイディタイプとは違った感じになると思います。もし仮にブレイディファントムの研究開発が進めば、いずれ全く違った形状の新世代の北米軍アメインが誕生するのかもしれません。

Q5:機体色の配色、カラーリングなどで意識された点がありましたらお聞かせください。

この辺りは先の質問と少し回答が被るかもしれませんが、主人公サイドの機体とは被らない様にいくつかパターンを出して、最終的には羽原監督と詰めていく方法で作業を進めました。
ブレイディハウンドやジョーハウンドにはアニメに登場する機体以外にも多数のカラーバリエーションが存在している筈です。ユーザーの皆さんにもその辺りを想像して、オリジナルの塗装をしてみるのもプラモデルならではの楽しみ方の一つかもしれませんね。

Q6:外伝シリーズ「境界戦機 フロストフラワー」ではジョーハウンドのバリエーション機、セツロも登場していますが、アニメ本編のメカデザインとの差別化など、意識した部分がありましたらお聞かせください。

武装や装備に関してはスタッフの皆さんから細かい指定を頂いてデザインしています。外伝とはいえ大きく離れた舞台ではありませんので、その辺りは方向性の差異が出ないようにしています。

Q7:ファンの皆さんにメッセージをお願いします。

境界戦機のHGシリーズは高密度と作りやすさを兼ね揃えたハイブリッドなラインアップになっていますので、宜しければ是非、気になった機体をどれか1つ手に取ってみて下さい。きっと価格以上の満足感を得られると思います。このインタビューが公開される頃にはアニメ本編も最終回を迎えていると思いますが、配信などで何度もご覧になっていただき、HGシリーズのプラモデルを作っていただけたら嬉しいですね。

−お忙しい中、インタビューにご協力いただきまして、まことにありがとうございました!−

海老川 兼武(えびかわ かねたけ)

メカニックデザイナー。『ガンダム00』など『ガンダム』シリーズをはじめ、多くのメカニックデザインを担当。
『境界戦機』北米同盟軍のメカニックデザインを担当。境界戦機プラモデルHGシリーズでも監修に携わっている。

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