本物のガンダムへ
近づけた新工法
“Metal Injection
Molding(MIM)”
溶解・鋳造して合金を製造することは、現実的に可能だが、細かいディテールやシャープさが出せない。はたまた月面同様の低重力下での精製は現実的に不可能であった。そこでそれらの条件をクリアするために発想を転換し、着目したのが〈Metal Injection Molding(MIM)法〉である。〈MIM法〉とは粉末材料を金型で成形したのち、拡散焼結することで一体化させて部品を得る技術だ。拡散焼結のため1000℃超に加熱はするものの溶解までは至らないので、重力による比重分離が起こらない。粉体を出発原料とするため、各種材料の複合設計が可能。つまりチタンの粉末にナノサイズのイットリウム酸化物粉末を均一分散させ、焼結することができれば、月面のような低重力下での溶解精錬と同じ効果を得ることが期待でき、〈ガンダリウム合金〉を実現できるのではないかと考えたのである。
早速、粒子径の異なる高純度チタン粉末と酸化イットリウム粉末を用意し、配合比を検討。また均一分散のために特殊な精密混合装置も用いることになった。また、焼結条件として、加熱条件・冷却条件・気体条件などを振って試作を重ねていった。そして初めて製品の精度と造形のバランスが取れたのだ。月面上での条件に近い製法でガンダリウム合金を再現するということをMIMという新しい技術で実現させることができた。
かくして、唯一無二の配合により、地球製〈ガンダリウム合金〉が誕生したのだ。