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“リアル感”と作る“満足感”とのバランス
- ──RGダブルオーライザーの開発で今回、苦労されたというか、ポイントになった部分はどこでしょう。
- 「リアルグレード(RG)」はPGやMGとは違った難しさがあるんです。フィクションであるモビルスーツに“リアル感”をどのくらい注ぎ込むかを、根底に据えておかなくてはいけないのかなと思ってます。たとえば僕らが、実際にGNドライヴを再現することは不可能ですよね。そうだとはしても、内部機構や外装の構造を、現代の技術から類推することはできる。モビルスーツを“実在の機体”として捉えてどこまで作り込めるか、RGを手がけるときに割と考えているところですね。
- RGはずっとそういうコンセプトでやられているんですよね。
- 第一弾のRX-78-2ガンダムから“もしモビルスーツが実在したら?”というコンセプトは変わらないですね。同時に、お客さんがRGを組むときにどのくらい労力であれば作りながら楽しめるか、そのバランスの加減があるんですよね。技術的に可能だからといって際限なくパーツを細分化してもいいのかというと、そういうことではなくて。“リアル”を堪能できる完成度と、組み上げていく労力がちょうど釣り合うポイントがあると思うんですよ。RGダブルオーは、細かいパーツ分割によって情報の密度を高めたところと、一体成型で簡単に組み上がるところに分かれているんです。RG自体、組み上げてデカールを貼っただけで、設定イラストの状態をほぼ再現できる仕上がりを目指しているので、ダブルオーの頭部の再現度は海老川さんに監修していただいたおかげで完璧に近いところまで来ています。ただ、そのためにパーツの分割が増えるのはなるべく避けて、バランスも考慮しています。
- 放映当時の話ですが、ダブルオーのマスクにRX-78-2ガンダムにあるような「へ」の字状のインテークを付けるか付けないか、スタッフ間でもかなり迷ったんです。エクシアのマスクには付けてなかったので個人的にはナシでもいいかなと思っていたのですが、スタッフの皆さんにもリサーチをして、結果的に付けました。ダブルオーは、オーガンダムとエクシアのGNドライヴを取り付けているという設定があったので、マスクにオーガンダムの意匠が残ってるというイメージ付けにしています。
- ダブルオークアンタのマスクでは「へ」の字は消えてますよね。
- 逆にクアンタはエクシアの意匠を多く残してあります。オーガンダム+エクシア=ダブルオーだったら、ダブルオー+エクシア=クアンタ、というイメージですね。
- RGは、1/144スケールでそういった細かいディテールの再現にどこまで迫れるかという課題もあって、技術的なチャレンジでマスクのインテークは必ず空けるようにしています。1/144スケールでマスクのインテークが空いているのはRGだけなんです。
- このサイズで穴が空いているのにビックリしました。このスケールで顔のパーツの精度はすごいですよね。
どのアングルでもキレイに見えるフォルム
- ──たとえば実機考証に基づいて、今回ディテールを追加した箇所はあるのでしょうか?
- モールドはそれほど追加していないですね。RGダブルオーのポイントのひとつを全身のバランスだと捉えていて、肩と足のバランスを取ることがすごく重要だったりするんですね。足のシルエットはへこみすぎてもいけないし膨らみすぎてもいけない。短すぎても長すぎてもいけない。どこかでうまくバランスをとる。ちょうどいいバランスの取り具合は、やはり海老川さんとやりとりしていかないと見つけられなかったですね。肩のシルエットもボリュームができて、カッコよくまとまってますよね。
- 肩周りのバランスは、1/144スケールのHGから始まって1/100スケール、PG、MGを経て、今回のRGのバランスでいい感じに落ち着いた感じですね。最初のHGは大きかったんですよね。PGのときはダブルオーライザーとしてのトータルのバランスで見てほしいとお願いしたんです。PGのGNドライヴにはLEDユニットと回転ギミックを入れる必要があったのでどうしても大きくなってしまう。さらにオーライザーのバインダーが付くので、肩は極力小さくするお願いをしました。おかげでPGは、バインダーがサイドにある設定画と同じポーズはすばらしいバランスになった。ただ本編のダブルオーって、稼働時はけっこう後ろにバインダーを向けているアクションも多かったんです。だからどのアクションにも満足できるバランスを見つけだすのは難しいなって思いました。正解はたぶん出ないんでしょうが、RGはすごくいいバランスになりましたね。バインダーを横にしても後ろに回しても、肩と本体とのバランスがすばらしいです。
- バインダーがどの位置にあっても違和感がないんですよね。なじむというか。
- 私もテストショットを組ませていただいて、立たせたときにバランスが取れているのをすごく感じました。このマッシブな感じはいいですよね。これまでだと上腕が細みに作られる傾向があったんですが、ここがマッシブになっているのはいいですね。
- 海老川さんにしっかり監修していただいたおかげですね(笑)。
- それと、ダブルオーは劇中だと飛行するシーンが多いので、足を伸ばしたシルエットを大事にしてほしいとRGの監修でもお願いした覚えがありますね。大気圏内でもGN粒子で浮遊することが可能なので、地面に立つシーンは劇中でも少ないんですよね。RGダブルオーの足は、流れるようなラインがきれいでいいですよね。
- RGダブルオーの脚部は、海老川さんに念入りに監修していただきました。いちばんやりとりをしたところかも知れなくて、足の太さと長さ、バランスが念入りに描かれた修正指示をいただきました。
ソレスタルビーイングMSのマーキングはフェイク
- ──お台場に1/1ガンダムができて、フィクションであるモビルスーツの関節やスラスターが実寸だとどう見えるのか実際に確認できるようになって、お客さんの“リアル”に対する目も肥えている気がしますね。そのぶん、プラモデルを開発するハードルも上がっているのでしょうか?
- 今までは頭の中で想像するしかなかったものが、お台場の1/1ガンダムが立ったことによって、サイズ感がものすごく明確に伝わりやすくなった部分はあると思います。その反面、僕たちキャラクターモデルのガンプラを作っているサイドからすると、どこに本物らしさを感じる部分が必要なのか、ポイントを絞っていくことが大切になってきます。たとえば、リアリティーを感じる素材をデカールに採用して、色を再現してみるとか。RGダブルオーだと胸や腕、脚部のGNコンデンサー部分は、レンズ部分の“きらめき感”を意識してします。ガンダムごとに意識する部分は変えていますね。
- ──デカールのお話が出ましたが、今回RG用のマーキングのポイントはどこになりますか?
- マーキング類はPGからフィードバックしていただいて、ちょっとだけ修正させてもらいましたよね。PGとRGはサイズも違いますし、ポイントを絞って点数を少し減らしています。
- マーキングは、本物感を打ち出すために可動箇所の近くには必ず「CAUTION」「WARNING」マークのようなものが入っているんですよね。肩も関節を動かす基軸には何かしらの注意を促すマークがあります。
- 設定上の話ですが、マーキング類はフェイクなんですよね。あれは文字の下に表示されているバーコードを、カレルという整備用ロボットが読み取るためだけのマークなんです。「ガンダム00」の世界だったら、カメラで視認されたらマーキングまで解読されてしまうと思うんです。ジェネレーターの位置や可動箇所が判明すると、そこが弱点だと察知される恐れがある。だからといってマーキングが存在しないこともないと思うので整備上で必要なのは文字の下のバーコードであって、それ以外は機体を解析させないための偽情報という解釈でマーキング類を配置しています。
- 第11話「ダブルオーの声」で初めてオーライザーとドッキングしたときに、ダブルオーの額の赤いクリアパーツに「00 RISER」の文字が浮かぶ演出がありましたよね。
- ありましたよね。エクシアの額にも「GUNDAM」と刻印されていて、世界に広めるために意図的に「ガンダム」という名前を出していると。
- RGの場合だとリアリスティックデカールで箔や透明シールを使うのは、そういう文字をきれいに見せるための要素としてはわりとポイントかもしれないですよね。
- GNコンデンサーのレンズの下にもデカールが貼られてますよね。
- 塗装しなくても劇中に近いダブルオーができあがるパーツ分割を考えていく一方で、プラスチックの成型色では再現できない、金属的な光沢感を表現するのがリアリスティックデカールなんです。RGダブルオーやエクシアでは、レンズ内で表示される文字がリアリスティックデカールで再現されています。以前だとホイルシールといって銀地のシールが使われていたりするんですが、RGだと銀地のところに小さな文字やラインなどが印刷されているのが特徴ですね。アクセントとしてこれまでとはまた違うRGならではの表現かも知れないですね。