現在放映中のTVアニメ「革命機ヴァルヴレイヴ」の主役機のプラモデル「1/144 ヴァルヴレイヴ Ⅰ 火人」は好評発売中。

 今回も引き続き、本アイテムをより深く知ってもらうため、アニメ本編でメカニカルコーディネーターとして参加している関西リョウジ氏とプロデューサーの池谷浩臣氏、そしてバンダイ ホビー事業部でアイテム開発に携わる西澤純一のインタビューをお送りします。


■『革命機ヴァルヴレイヴ』1/144 ヴァルヴレイヴ I 火人 / バンダイ / 発売中 / 2,592円(税8%込)
 突如日常から一変、独立を宣言した少年少女らは、それぞれの勢力に対して“切り札”となるヴァルヴレイヴの力を手に戦う道を選んだ。ヴァルヴレイヴもいよいよ後続機が登場し、1号機との性能的な違いが明確になった。

メカファンにとっては、今後のプラモデル展開も気になるところだろう。インタビューの後編では、プラモデル設計にあたりポイントとなった部分について、より詳しく訊いていく!


■ついに発売となったヴァルヴレイヴ I 火人
【参加者】
関西リョウジ氏
池谷浩臣氏(サンライズ)
西澤純一(バンダイ ホビー事業部)

■左より、バンダイ・西澤、メカニカルコーディネーター・関西氏、
 サンライズ・池谷氏
●ヴァルヴレイヴの開発

──番組がスタートして間もなくの発売ということで、開発スケジュール的にも大変だったと思いますが?

【西澤】:とにかく、番組開始からすぐのタイミングに合わせて発売できるよう必死で取り組みました(笑)。
実際の映像がない段階では、アニメ制作に携わる方々との打ち合わせで方向性などを決めていくことになるわけですが、その時にやはり重要になるだろうなと感じていたのが「硬質残光」です。武装などのオプションパーツはもちろん、ヴァルヴレイヴの場合は「個性」を出すためにエフェクトパーツも充実させよう、という方向になりました。

──アイテムの構成、例えばランナーやパーツ数についてはどのようなコンセプトだったのでしょう?

【西澤】:ガンプラでいえば初心者から中級者向けを意識しています。MGシリーズほどの難しさはないけれど、HGより組み立て甲斐があって欲しい、と感じる方にぴったりじゃないでしょうか。
改造や塗装など、作り込みの余地を残しつつ、標準の組み立て工程には必要以上の難しさを感じないよう配慮したつもりです。また、ユーザーが自分でパーツを製作するのが難しい「透明パーツ」も積極的に採り入れています。


■上級者でもなかなか自作することが難しい透明パーツを積極的に採用。クリアグリーンのセンシズ・ナーヴや、エフェクトパーツなどで効力を発揮する
──絵ではなくCGが存在するメカの設計をするのは難しかったですか?

【西澤】:アニメ用のモデルデータがあるだけに、間違えることができないというのはプレッシャーですね。後に提供していただいたモデルデータで“答え合わせ”をしていくのですが、プラモデル上では成型上あまりにも細かいディテールは表現できないサイズとなる場合があります。それを、ディテールの間隔を計算しながらなるべく入れ込むことで、密度感を上げていきます。
スリットなども、ラインをシールなどで再現したり、形状を階段状にして再現したりする方法もありますが、実際に立体にしておくと、影ができることで精密感が違ってきますからね。


■細かなディテールは徹底して作り込み、精密感の表現のバランスをとることで巨大なメカのスケール感が出る

──プラモデルでは、左脚に縦に入っているラインは分割で表現されていますね

【西澤】:ここはあえてシールなどではなく、パーツ分けで再現しました。なぜかというと、人型ロボットの場合、腕や脚はいつもだと同じようなパーツ構成のものを必ず左右合わせて2回繰り返して作ることになるじゃないですか。それをうまく避けつつ、楽しさ・新鮮さを継続して組み立てられると考えたからなんです。
シールに関しては、シールの貼りやすさを考慮してパーツを分割したところもあります。シールを貼ることで劇中のイメージに近づけることができ、また完成した時の満足感も得られるので、ぜひ貼っていただきたいと思います。
●監修作業

──試作品の監修もされたことと思いますが、メカの設定案を構築していく“メカニカルコーディネーター”の目から初めて立体になったものをご覧になった感想は?

【関西】:さすがバンダイさんは押さえるべきところを押さえているというか、正直監修というよりも「スゴイ!」を連発してましたね(笑)。もちろん劇中と明らかに違う、というところは指摘もしましたが、それ以外はもうほぼそのままOKを出しています。
【西澤】:関西さんとのやり取りの中で、ヴルトガの先端部に付いている2つのフォルド・シックルのパーツの可動について意見をいただいたんですが、これは目からウロコでした。動く部分というのは可動機構を入れるというのが普通の考え方なんですが、アイデアの先駆けとしてご意見をいただいたことで、プラスチックのパーツで挟み込んで押さえるという構造を利用して、少ないパーツで動くようにしてしまおうと考えることができたのは新鮮でした。

■可動部分を、あえて可動軸などを作らずに動かせるように作る(丸印の部分は挟み込むだけで取り付けられている)。これもアニメスタッフとプラモ開発者とのやり取りの中から生まれたアイデアだ
──ヴァルヴレイヴのデザインはかなりエッジがシャープですが、それらも再現されていますね

【西澤】:はい。安全基準の観点から対象年齢を15歳以上とすることで、かなりシャープにできました。ただし、クリアグリーンのセンシズ・ナーヴなどはパーツの強度を考慮して、実際の劇中CGよりも若干太くしてあります。それを、なるべくシャープな印象に感じられるように、斜めに角度を付けるなど工夫しました。

【池谷】:作画スタッフも、CGスタッフもこの立体を資料として使っています。CGと作画のハイブリットのカットも多く、エフェクトや動きを決めるためのラフ画稿を起こす際に、作画スタッフがこの立体を見て描いたり、モーションを付ける際にCGスタッフが使用したりしています。形状の把握にはもってこいです。

■1/144スケールでフィギュアが付くというのは珍しいが、人間との対比ができるおかげでヴァルヴレイヴの巨大感が手にする人間にも直感的に把握できる
【関西】:松尾監督(注:『革命機ヴァルヴレイヴ』監督の松尾衡氏)がヴァルヴレイヴと人間の大きさの対比が、プラモデルと付属のフィギュアで見ると分かりやすいとおっしゃっていましたね。
●ヴァルヴレイヴのメカ演出

──ロボットアニメではメカの設定を詰めていく作業の中で、アニメ演出家の方から「こういう演出がしたい」という要望があってデザインや機能が決められるということも多いと聞きます。ヴァルヴレイヴについてはいかがでしょう?

【関西】:松尾監督との間で共通していたのは、「このロボットならではの個性」というのを出せないだろうか? という点です。機体が光るというギミックにしても、これまでと違うものをということで末端部に発光部を付け、動きの軌跡を描く「硬質残光」の形になりました。
監督はこちらの出すアイデアに対して「ある」「なし」をジャッジするだけではなく、「そういうことなら、こういうのはどうだろう」といった感じで磨いてくれるんです。それに対してこちらも、「ではこういうのはどうでしょう」とさらに進んだ考えを提示できる。そこは作業をしていても非常にやりがいを感じるところでしたね。

■暗い宇宙の中でも、それぞれの個性が際立つような色彩設計が施されている。華やかさとともに、一目でそれと判別できる分かりやすさがある

──ヴァルヴレイヴは全体的に色彩がカラフルな印象がありますが、色の設定についてはどのように考えていらっしゃいましたか?

【関西】:実際の兵器であればあり得ないカラフルさではありますが、画面に似たような色のメカが並んでいても面白くないな、と思ったので、5機のヴァルヴレイヴの色は分かりやすく全機変えることにしました。爆発光やビーム光だけじゃなく、宇宙での戦いにも機体や硬質残光などいろいろな彩りを添えています。
逆にドルシアの方は本物の宇宙開発の現場で使われる白色と、国家自体の持つ雰囲気を表すための金色の組み合わせで表現してるんです。

【池谷】:最初に石渡さんに出していただいたラフでは、ヴァルヴレイヴの黒の部分は白でした。つまり原案では白と赤のメカだったんです。でも、話し合いの中でこのロボットの“呪われている”というキャラクター性などを鑑みて、黒でやってみたらどうだろう、と意見が出まして、それで今のようになりました。単純なヒーローロボットではない、という個性を表せたのではないかと思います。

【西澤】:実ははじめに黒のプラランナーを白色で成形したサンプルを作ったんですよ。その後、放送直前に黒色で製品の量産を始めたところ、社内の人に「あれっ、白じゃないけどいいの?」って慌てて確認されてしまいました(笑)。

【関西】:1話を見た人に「黒だったんだ!」と驚いてほしくて、西澤さんにもお願いして放送までヴァルヴレイヴの本当のカラーを公表しないようにしていたんです。ネットが普及した時代ですから、情報が洩れないように隠し通すのは大変でした。でもそのおかげで、見てくださった人にサプライズを感じてもらえたのではないかと思います。
●プラモデルを楽しんで!

──すでに1号機を含めて5体のヴァルヴレイヴのデザインが公開されていますが、ずばり今後のプラモデルシリーズの展開は?

【西澤】:5月16日から開催された静岡ホビーショーでは頑張って5体を展示する予定です。(※当インタビュー実施日はホビーショー開催前)。今後も頑張って続けていきたいですね。

──ユーザーさんのプラモデルをどのように楽しんでほしいと思いますか?

【関西】:光沢の具合ひとつ取っても人によって好みがありますよね。劇中のイメージの再現はもちろん、マーキングなども含め現用兵器のように仕上げてもらってもいいと思います。
自分もサンライズの昔の作品やバンダイのプラモデルを見て育っているので、作品が広がるバリエーションについては、西澤さんと話し合ってユーザーさんそれぞれの思いを受け止められる余地のあるアイテムにしてもらったつもりです。いろんなカラーリングのヴァルヴレイヴがあっていいと思いますよ。例えば15号機のヴァルヴレイヴⅩⅤ(フィフティーン)など、アニメに登場していないオリジナル設定機を想像して作って頂けたりしても非常に嬉しいですね。

■5月18日、19日にツインメッセ静岡で開催された第52回静岡ホビーショーでは、実際にヴァルヴレイヴ5体やバッフェが展示された。
※4号機、5号機、6号機、バッフェ(有人タイプ)、バッフェ(無人タイプ)は参考展示として。
【西澤】:今のお話のようにユーザーが自由に自分のイメージで作ることができるのがプラモデルのいいところですが、今の市場には買ってきてすぐ飾ることができるフィギュアもたくさんあります。今回のヴァルヴレイヴは、プラモデルユーザー、フィギュアユーザー、その全ての方に向けて作ったつもりなんですよ。
プラモデルでは普段はあまり付属しないエフェクトパーツを付けた、というのもそういう理由からです。その意味では、作ってすぐに飾りたい人から、動かして遊びたい人、こだわって徹底的に作り込みたい人まで幅広く受け入れてもらえるのではないかと思っています。

■インタビュー終了後、プラモデルのサンプルを前に語り合う一同。左から2番目はサンライズのプロモーション担当・米川氏
 プラモデルを手に取った人は、様々な彩りのパーツが決して圧倒されるほどの量でなく、ほどよくまとめられていることに気付いていただけるだろう。いくらパーツをはめても完成形が見えてこない、などということもなく、1つの工程を経るごとに確実にヴァルヴレイヴの形状が姿を現していく―。

組み立てを通じてヴァルヴレイヴの姿を曝く、と言い換えてもいい。

きっと、このインタビューの中で語られたことを思い出しながら作っていただければ、もっと楽しくなるはずだ。

バラバラの状態から組み上げ、そして完成後も動かして遊ぶことができるプラモデルは、作品世界と君との繋がりをもきっと近くしてくれる。