バンダイは現在放映中のTVアニメ「革命機ヴァルヴレイヴ」の1/144スケールプラモデルを4月27日に発売。 ここでは、本アイテムをより深く知ってもらうため、アニメでメカニカルコーディネーターとして参加している関西リョウジ氏とプロデューサーの池谷浩臣氏、そしてバンダイ ホビー事業部でブラモデル開発に携わる
西澤純一にお話を聞いた。
『革命機ヴァルヴレイヴ』は、現代日本の置かれた情勢を投影したようなジオールの設定、そしてヴァルヴレイヴが額に戴くヤタガラスのシンボルなど、心惹かれるキーワードに満ちあふれた作品だ。魅力的なキャラクターたちも登場し、それぞれの思想の交錯も示された。視聴者は物語の先を見たくてウズウズしているに違いない。

 もちろんロボットアニメであるから、メカ描写にも注目だ。主人公の操る機体でありながら、秘密のありそうな、どこか影を臭わせるヴァルヴレイヴは、「搭乗者登録」や「硬質残光」など第1話でも様々な手法による印象的な演出がなされた。


『革命機ヴァルヴレイヴ』1/144 ヴァルヴレイヴ I 火人(ヒト)
バンダイ / 発売中 / 2,592円(税8%込)
では果たして、バンダイのヴァルヴレイヴは劇中で描かれたこのメカの魅力をいかにしてプラモデルとしてのアイテムに落とし込んだのか? このキットはアクションを重点に置きつつ、プラモデルならではのエッジの効いたパーツで劇中のフォルムと精緻なカラーリングを立体化。3色のクリアパーツを随所に配置し、アニメーションで描かれる印象的なヴァルヴレイヴの姿をイメージ通りに再現した完成度の高いキットである。

 第1回目は、このヴァルヴレイヴをアニメの演出論の観点から掘り下げる。

【参加者】
関西リョウジ氏
池谷浩臣氏(サンライズ)
西澤純一(バンダイ ホビー事業部)

1/144ヴァルヴレイヴのキット。適度なパーツ分割とシールによって複雑で美しいカラーリングを再現。空間を自在に躍動する劇中のイメージを捉え、アクション性を第一に考えて設計されている
●アニメの中のヴァルヴレイヴ

──ヴァルヴレイヴのデザインについて、コンセプトや方向性、狙いというのはどういった点にあるのでしょうか?

【関西】:松尾監督(注:『革命機ヴァルヴレイヴ』監督の松尾衡氏)としては第一に「人の形をしている」ことを強調したいということでした。骨組みを構成している内部フレームに関しては、剛性の高そうなガッチリしたものにして、一見して強そうでいかにも動きそうなイメージにしたかった、ということはおっしゃられていましたね。

──ヴァルヴレイヴのデザイン決定に関してはかなり苦労されたのでしょうか?

左より、西澤、関西氏、池谷氏
【関西】:ヴァルヴレイヴの基本デザインについては、監督と石渡さん(注:ニトロプラスの石渡マコト氏)の間で相当の時間をかけて決められたと聞いています。僕はその基本デザインを基に、手足の先端部にクリアパーツを配した「硬質残光」のアイデアであったり、他号機バリエーションのシルエットやギミックの違いによる具体的なコンセプトを提示したりというような作業を行いました。

──過去、印象に残るロボットアニメは、それぞれに特有なアクションというものがありました。ヴァルヴレイヴでもそれは意識されていますか?

【関西】:あの世界ではヴァルヴレイヴ以外は基本的に脚のないメカばかりなので、そこで主役メカとして際立たせることができています。宇宙空間で単純にスラスターを噴かして移動するのではなく、ヴァルヴレイヴは身体をひねったりして、人の形をしているからこそ可能なアクションを意識していると監督はおっしゃっていましたね。

──3Dで意識的にアクションをさせることについて、例えばどのような工夫がありますか?

【関西】:ヴァルヴレイヴはセルアニメの中で用いられてきた演出手法を、積極的に3DCGに持ち込もうと試みています。そこは今回のメカニックの表現方法の中で、松尾監督が特にこだわられている部分だと感じています。

──実は最初デザインを見た時に、「これが3Dの速い動きでアクションをした時、形がちゃんと分かるだろうか?」と感じたのですが、まったくそんなことがなかったのが印象的でした

【関西】:そうですね。「ロボットがこんな動きをしているから凄い」ではなく、そのロボット特有のアクションを効果的な角度と動きできちんと見せるのが一番です。ロボットのデザイン上の良いところを意識的に見せてあげたいという思いは松尾監督も同様で、第1話に関してもベストな形で演出していただいたのではないかと思います。

──モデリングデータを用いた3DCGでそういった意識的なアクションを作る難しさというのはいかがでしょう?
【池谷】:多くのスタジオでやっていることかもしれませんが、この作品でもいわゆる今までのセルアニメでやっていた動きを表現するために、作画の動きを参考にして、3Dチームで調整をかけています。また、動きのケレン味出すためにパーツで分けてパースやサイズの調整をして、それを動かして強調すべき部分を見せるといった手法についても積極的に取り組んでいます。

──刀を抜くカットやプールからの出現シーンなどもとても印象的でした

【関西】:プールのシーンは、僕も一視聴者として楽しませてもらいました。あそこは監督によれば背中についた緑色(センシズ・ナーヴ)の翼の存在を印象づけたいという意図があって、あのような翼から水を切って出現する形として演出されているんです。
●プラモデルとしてのヴァルヴレイヴ

──プラモデルのヴァルヴレイヴについてお訊きします。設計はどのように進められたのでしょうか?

【西澤】:ヴァルヴレイヴは3Dデータが完成する以前から、つまり線画の設定しかない段階から設計を進めていました。その後、細かい部分の設計が正しいかどうかの確認にアニメ作画用の3Dデータを参照させていただいています。

──プラモデルにも様々なコンセプトがあると思いますが、ヴァルヴレイヴについてはどのような点に気をつけて設計されていますか?

【西澤】:先ほどの関西さんのお話にもあったように、ヴァルヴレイヴはアクション性が重要になると感じていましたので、そこの部分を強めて設計するようにしました。ただ、これまで弊社が手がけてきたロボットとは少し違って、ヴァルヴレイヴは例えば太股からスネ、上腕から下腕といった関節構造的な意味での繋がりがデザインからだけでは判別しにくいところがありました。しかも、実際の映像、動きのイメージが完成する前からでしたので、そこを入念に検証しながらの作業になりました。

──関西さんは、実際に立体になったものをご覧になっていかがでしたか?

【関西】:ロボットには設定画としてのカッコ良さであったり、画面上の動きのカッコ良さであったり、いろいろなカッコ良さがあると思うのですが、このヴァルヴレイヴは設定画のバランスを良い形で再現しつつ、プラモデルというアイテムとして非常に魅力的に仕上がっていると感じました。

──アニメの制作側としての立場からプラモデル化にあたって要望といったものは出されたのでしょうか?

【関西】:最初に西澤さんと打ち合わせした時に、プラモデルとして見映えのするポージングであったり、動かした時の心地よさであったり、といった部分で関節の動きをアレンジするのは自由にお願いします、とお伝えしました、例えば飛行姿勢の時に顔がグッと前に向くように大きく可動範囲を取るといったところです。メカデザイナーの方々がアニメ上での動かし方や見映えを考慮してデザインするのと同じように、プラモデルの設計ノウハウを豊富に持つバンダイさんだからこそ気がつく適切な構造や設計というものがあるはずで、そこは全面的に信頼していましたね。
【西澤】:プラモデルを設計する場合もどこに重点を置くかといったことは非常に大切になってきます。ヴァルヴレイヴの場合は「アクション」がポイントと考えましたので、これを踏まえた設計としています。具体的にいいますと、腕のカバーパーツは実際には腕の可動に追随するような設定ですが、プラモデルでは可動範囲を問題なく多く取れる位置に固定しています。これは「組み立てやすさ」にも配慮したパーツ分割としたからなんです。そのほかにも、監修の中で変更していった部分として、先ほど関西さんがおっしゃった首の部分の可動があります。アニメの中で飛行中のアクションも見せたい、というお話もありましたので。
【関西】:ヴァルヴレイヴはアグレッシブに戦うロボットなので、大胆な前傾姿勢を取ることのできる構造にしてもらえたのは嬉しいですね。

飛行姿勢状態のヴァルヴレイヴ。大きく取られた首の可動範囲によって、進行方向に対して正面に顔が向いているのが分かる
次回は、プラモデル ヴァルヴレイヴの詳細な仕様を見ながら、関西氏が「こういうアイテムであってほしい」と願ったその想いと、これに応えたバンダイの心意気をみなさんにお伝えしたい。