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バインダーのスライド機構で帳尻を合わせる

  • ──海老川さんのほうでオーライザーの監修も手がけられたのでしょうか?
  • RGダブルオーライザーは、オーライザー込みでしっかりとやりとりさせていただきました。
  • RGのオーライザーではバインダーがスライドするんですよね。これはRGにしかないギミックです。
  • バインダーをスライドさせるのは、打ち合わせのときに出た話でしたよね。
  • シルエットで立たせたときのバランスを見たときに、GNドライヴに付いた状態だとバインダーがちょっと下がっている感じに見えたんです。それをどこかで改善できないかという相談を受けて。そのときにバインダーの基部にスライドギミックを入れてみませんかと提案したんです。
  • それと、試作のオーライザーは機首とバインダーの先端がそろっていて、3本の棒が並んでいるように見えていたんです。それがバインダーにスライドギミックを仕込むことで、両端のバインダーが後方にずれて機首が伸びて見えるようにもできた。
  • スライドギミックで位置を調節できるようになったことで、オーライザー形態のときのフォルムと、ダブルオーライザーになったときの肩のバランス、両方の帳尻をうまく合わせることができた。現代の戦闘機にも可変翼を採用している機体が存在するので、実機として捉えたときオーライザーにも可動機構はあってもいいんじゃないかなと思いますね。
  • これまでの商品開発のノウハウが蓄積されていたおかげで、RGはやりやすかったですね。やりとりをするうえで話も通じやすかったですし。

クライマックスに登場したGNソードⅢ

  • オーライザーの話になると、「機首のオレンジのところはコックピットのキャノピーですよね」と言われるんですよ。
  • いまだに勘違いされる方がいらっしゃるんですけど、センサーなんです。別にミスリードを狙ったわけではなかったんですが、戦闘機だったら機首にキャノピー的なデザインがあったほうがいいんじゃないかって。
  • ──本来のコックピットは別にあるんですよね。
  • 機体の中央ですね。RGのキットにもハッチのオープンギミックが付いてますね。
  • オーライザーはけっこう大きいですよね。ガンダムと合体するサイズだと、現代の戦闘機と比べるとだいぶ大きくなるのでは?
  • そんなことないですよ。現用の戦闘機F-15でも18m弱のオーライザー以上の20m弱くらいあります。F-15は大型の戦闘機になりますけど、そのへんはあまり意識していなかったですね。劇中の演出で誤解されている方もいるようなんですが、ダブルオーとドッキングすると、パイロットは後ろ向きになって戦闘になったら気持ち悪くなるんじゃないかって話もあったんですよ。設定では内部にコックピットの回転ギミックがあって、ダブルオーライザーではちゃんと正面を向いている設定だったんです。
  • 武器のデザインだと、GNソードⅢが後半のパワーアップに欠かせないアイテムですよね。
  • GNソードⅢは当初、登場の予定はなかったんですよね。でも後半、ほかの3機はパワーアップするんですよ。「ダブルオーにもエクシアのGNソードみたいなでっかい剣が欲しいね」って意見がある一方で、「ダブルオーはオーライザーが付いて無双状態なのに、これ以上強くしてどうする」という話もあった。結局、「クライマックスなのに、主人公機だけビジュアルが変わっていないと、ちょっと寂しいですよ。やっぱり新しい武器を出しましょう」ということに決まったんです。それでギミックのある大剣を追加することになったんです。GNソードⅢは装備させて正解でした。イメージが変わるんですよね。オーライザーでボリュームが増えちゃっているぶん、それまでの武器がどうしても貧弱に見えちゃっていたので
  • 僕は放映当時、一視聴者だったんです(笑)。当時から見ていて、GNソードⅢのかっこよさは印象的でしたね。オーライザーの下にGNソードⅢを装着する形態は、PGから盛り込まれたものですよね。
  • そうですね。PGからのオリジナルギミックですね。だから、この状態は本編に出てないです。PGの開発時に「GNソードⅢをオーライザーに付けられませんか?」という話をしたんです。
  • ロボットのプラモデルだと、武器がたくさん付属するのが商品上のアピールポイントになることが多いんですが、保管に困るデメリットもある。手に持たせる以外に機体に装着できない武器は、余った状態になって、使わなくなってしまうこと多いんですよね。GNソードⅢは劇中だと、どうやって運搬するんだろうと考えたときに、オーライザーだろうなと。
  • オーライザーへの装着形態も、ウリのひとつになってよかったですよね。予想外のギミックだったみたいで、インパクトがあったようですね。

物語をたどるように組んでほしい

  • ご自身がデザインしたガンプラをモデラーさんが新しい解釈で作り込んでいるものをご覧になる機会はありますか?
  • ありますし、拝見できるとやっぱりうれしいですよね。ガンプラは素材のひとつと捉えることができますから、独自の解釈を入れていただくのもいいですし、設定準拠で作っていただくのも楽しいと思います。それこそ僕はガンプラブームの直撃世代だったので、おもちゃ屋さんにも並びましたし、模型コンテストにも出してました。そのころは、自分流に改造してたくさん作ってましたね。
  • 逆に刺激を受けることもあるのでしょうか。
  • そうですね。昨今の大会を見ていると、「今のお客さんはこういう改造をするんだ」と、トレンドというか傾向がわかって勉強になります。
  • ガンプラは、お客さんのニーズに合わせて進化してきたので、RGももしかしたらこれまでと違う形のものが出てきたりするのかもしれないですね。お客さんのイメージするものが変わっていくと、それに合わせたガンプラの進化というのも、きっとあるんじゃないかなって思いますね。そういう意味では、“リアル”を演出する要素もまた徐々に変わっていくのかもしれないですね。
  • こんな事言ったら怒られるかもしれないですけど、RGを1体作ったら、当分ガンプラはいいやと思うくらい内容が濃いですよね(笑)。それでもやっぱり、今回のダブルオーライザーの内容はRGでしか作れないでしょうし、MGとも解釈が違いますよね。
  • 違いますね。MGはアニメの形をどうイメージするかが開発時のポイントになっていたりしますね。アニメでのシーンや資料を見比べながら、そのイメージを形作っていくのと、RGを開発する際に現代の技術を踏まえて、もしこの世の中に実在すると仮定して機構を考えていくのとはまた違うんですよね。
  • RGは昔のMGとコンセプトが近いですよね。どちらかというと初期のMGのコンセプトがRGに移行してきた感じなのかな。
  • ──最後にメッセージをお願いします。
  • RGシリーズはダブルオーライザーで18点目になります。こうして数を重ねてきて、エクシアをRGで商品化できたからこそ、ダブルオーライザーも実現できたのかなと思っています。ダブルオーライザーの中にはできうる限り“本物”感を詰め込んだので、今までHGやPGを購入された方でもまた新たに楽しめるものにはなっているかと思われます。その違いというものを、より“本物”への思いを作っていただけると楽しいかなと思いますね。
  • RGダブルオーライザーは、すでに「ガンダム00」のキットを作ったことがある人にこそぜひ触ってほしいなって思っています。実は外から見えないところにかなりリアルポイントを詰め込んでいたりするんですね。GNドライヴの話もそうですし、オーライザーの表面ディテールだけじゃなくて、背中とのジョイント部分のところもそうです。アニメでもかなりピックアップされていた、合体シーンのメカニカルな描写であったりとか。バインダーにはエネルギーを伝達するためのものと解釈した、ケーブル状のディテールが入っていたり。実は組み上がった状態以上に、組み立てているときに見てほしいポイントが多々含まれているんです。外見だけではなくて工業的なところも兼ねて、実在する技術の延長にあると解釈をしているからこそできる造形が、RGにはいくつも含まれているので、ダブルオーライザーを組み立てながら、ギミックやディテールを発見してもらって「ここが本物を感じるんだ」というのを実体験してほしいなと思います
  • “リアル”に作るというところは、バンダイさんにお任せしているところがあって、私はダブルオーライザーのシルエット、形状を重点的にチェックさせていただきました。実際に仕上がった商品は本当にすばらしいシルエットにもなっていますし、とにかく作っていて楽しいんですよね。組立説明書の順序で、物語をつづるような感じで作っていただけると、より楽しめるじゃないかな。ダブルオーの本体を作ったら、ひととおりいじって遊んでいただいてからオーライザーを組んでもらう。それからオーライザーで遊んでもらった後にGNソードⅢを組んで遊んで……そういう段取りで作っていただけると、より楽しめるんじゃないかなと思います。この後、何が出るかわからないですけど、クアンタやリボーンズガンダムもRGで実現できたらうれしいですね(笑)。
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