メカデザイン会議にバンダイ・スタッフも参加

  • 私は「機動戦士ガンダム00」で初めてガンダム・シリーズに参加させていただいて、TV放映と連動してプラモデルを展開していくのも初めてだったんです。当初からホビー事業部の馬場さん、西澤さんもサンライズのスタジオへいらして打ち合わせに参加されていたので、直にやり取りをしながらメカデザインを進めていきました。
  • キットの成型色だったりだとか、可動の範囲といったメーカーサイドの意見をメカデザインの打ち合わせで述べさせていただいていたんですよね。
  • そうですね。たとえば「パーツの分割の都合でここの色分けは厳しいです」といったアドバイスをいただいて、細かい塗り分けはシールで対応していただいたり。とはいっても、映像で登場するものを再現するためにはどうすればいいかをまず考えてくださっていて。誤解されることも多いのですが、厳しい制限・縛りがあったわけではないですね。最初にまずデザイン・コンセプトを理解していただいて、そこから商品開発で揉んでいただいくなかで、商品構成上どうしても厳しいところは相談し合いながら制作してました。
  • でも、障害や壁に当たったときが、アイデアの切り替えどころというか、商品的にはおもしろいものが生まれるチャンスでもあるんですよね。
  • お互いに意見を出し合ううちに、どんどんアイデアが洗練されていってよりよいデザイン・商品ができあがっていくのが、本当におもしろいですね。私らメカデザイナーだけじゃなくて、監督の水島精二さん、脚本の黒田洋介さんも積極的に参加されていて、いろんなアイデアをいただきました。
  • 黒田さんから演出のプランだったり、戦闘時のシチュエーションとか、劇中のシーンをイメージしながら、MSの設定を作っているというお話もあったので、そういうものも商品開発の段階で取り入れていった部分はありましたね。
  • 黒田さんはそのへんにこだわられていて、デザインした武器やギミックは全部、劇中で使ってあげなきゃって思ってくださっていて。「機動戦士ガンダム00」でもちょっとした武器の設定も本編で可能な限り拾っていただいてます。それは「ガンダムビルドファイターズ」シリーズでも変わらないですね。

スタンダードでありつつ新しい試みを

  • 「機動戦士ガンダム00」のファースト・シーズンでデザインされたガンダムエクシアは、GNドライヴのコーン型のスラスターなど独自のラインが見受けられて、これまでのガンダム・シリーズと違った印象だったんです。ご自身の中でコンセプトがあったのでしょうか。
  • 当時も似たご質問を受けたことが何度かあったのですが、私自身は比較的スタンダードなガンダムをデザインしているつもりだったんです。もちろん小さいころからガンプラは大好きでしたし、いっぱい作ってました。「自分だったらこうしたい」みたいな意識はあったと思うんですよね。ただ、皆さんに言っていただけるぐらい、これまでと違うデザインになった意識はなかったですね。確かに肩からコードが伸びていたり、デザインのアクセントは少し異色だったかも知れませんが、肩のパーツは今までの連邦系MSからそれほど外れたデザインではないですし、逆に「オーソドックスなラインにまとまっている」と言われるのでは?思ってました。実際にデザインが公開されると、背中のコーン型スラスターや胸のレンズ状のデザインは好みが分かれたみたいで(笑)
  • エクシアのレンズ型の胸部は、特徴的なデザインだったと思います。HGのキットでもクリアパーツで再現されてましたね。
  • 胸の中央にあるレンズは、特撮ヒーロー的な見方をしていたんですよ。変身スーツが光ってきれいだなって思っていて。クリアパーツはこれまでだとビーム刃やカメラアイとセンサーくらいで、機体の目立つ箇所にはあまり使われてなかったのでエクシアに取り入れてみました。それとレンズ状になったGNコンデンサーは文字が表示されるデザインなんです。私は当初モニター・デザインで参加する予定だったので、最初の主役メカのデザイン・コンペでエクシアを描いたときに、「採用されなくてもこのレンズのアイデアだけでも採用されたらラッキーかな」と思って付けていたんです。採用されたらモニター・デザインの仕事がひとつ増えるじゃん!と(笑)。TV放映当時、「機動戦士ガンダム00」でHGのテストショットを組んだのはエクシアが初めてで、クリアパーツは本当にきれいでしたし、同じパーツ構成の商品よりも豪華に見えますよね。
  • ソレスタルビーイングの4機は、横並びの姿を意識されてデザインをされたんですか?
  • エクシア以外の3機は柳瀬敬之さんが担当されたんですが、ファーストシーズンでは意識しましたね。もちろんスタッフの皆さんと相談してですけど。往年の戦隊ヒーローの並びですね。リーダーがいて、クールな奴もいれば、太っちょな奴、紅一点もいる。画面で並んだときにビジュアルのわかりやすさを意識しました。そのあたりのイメージはファースト・シーズンでできていたので、セカンド・シーズンではそこから大幅に方向転換することなく進めていきました。

ダブルオーライザーのイメージソースは“コウモリ”

  • セカンド・シーズンから登場することになるダブルオーガンダムは、どういう流れでデザインを進められていったのでしょうか?
  • 最初は具体的な細かいオーダーはなくて「今度はGNドライヴが2つある、ツインドライヴを搭載するエクシアの後継機」っていう、大雑把なイメージがあったんです。ほかに水島監督からは「エクシアはマッシブなレスラー体型で、ダブルオーはアスリートのような引き締まったフォルムにしたい」、そういうビジュアル面でのキーワードをいただいて描きはじめました。
  • “2つのGNドライヴ”というキーワードを使って、それをどこに搭載するかという検討から始めていったんですよね。
  • 本当にいろんなところにGNドライヴを付けたラフを提出しましたね。後ろに付けても正面から見たら2つあるとわからないんです。特徴的なコーン型スラスターが2つ見えていないと、エクシアよりもパワーアップしていることが視覚的にわかりずらい。結局、ラフを描いているうちに肩に付ける方向に落ち着いていったんです。ただ、ファーストシーズンのガンダムヴァーチェがそうだったんですけど、あまり大きいものを肩に付けると、商品だと腕が垂れてしまう欠点があった。だから、肩に直接取り付けるのではなくて、背中に接続することで重心のバランスをとる工夫を試していったんです。
  • そこも商品になったときの都合を考慮していただいたということですね。
  • そうですね。オーライザーと合体して、ダブルオーライザーになることも最初から想定して描いていたんです。GNドライヴだけだったらいいかも知れないけど、そこにオーライザーのバインダーが付いたらさすがに肩に負担がかかりすぎる。アームを介して背中に接続するのは、やり取りの中で出たアイデアですね。最初は、動力源が肩にぶら下がっているように見えるのは、ビジュアル的にお客さんが納得できるか不安だったんですが、今となってみれば、ツインドライヴの配置はこれで正解だった気がします。
  • ほかに苦労された点はありますか?
  • エクシアよりも線の量を減らさなきゃいけなかったんです。オーライザーとダブルオーが合体すると、実際に線の量も2体分に増えるので。シルエットも変わってしまうので、そこが難しいところでしたね。とはいっても、作品タイトルを背負う主役メカですから、線を減らしたせいで貧弱に見えてしまうのも避けたかった。なので、ダブルオーでは多少シンプルな印象でありつつ、ダブルオーライザーになってエクシアと同じくらいの線量になるように調整していきました。
  • 以前、水島監督との対談で、ダブルオーライザーはコウモリのイメージだったというお話があったかと思うのですが。
  • そのとき水島監督がおっしゃっていたのが「完全な正義のメカではないので、シルエットが少し異形な、禍々しさが出るといいな」というものだったんです。それからオーライザーのラフ案を何回かやり取りしていたときに「羽根を広げたコウモリみたいなシルエットにしたい」というオーダーをいただいて。オーライザーを装着したときに横にシルエットが広がるのは、そういう感じを出したかったからです。最初はもっと貧弱でしたけど、さらに「オーライザー単体は戦闘機としてスマートさを追求したいね」って話も加わって、今のデザインに固まっていったって感じですね。
中編に続く
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