ザブングル・アイデンティティー
いつも当ブログをご覧いただきありがとうございます。
ホビー事業部企画開発チーム・デザイン担当の小林です。
R3のパッケージデザインにつきましてはギャリアから携わることになりました。
今後ともよろしくお願い申し上げます。
先日の自己紹介とやや被りますが、
'70年代前半に生まれ、本放送時小学校3年生だったザブングル原体験世代です。
子供の頃植え付けられた記憶は消そうとしてもなかなか消えないもので(笑)、
振り返るとザブングルのいろんな思い出が頭をよぎります。
キャラクタープラモ百花繚乱の時代を迎えていた当時、
学校近くの文房具屋さんやこじんまりした近所の駄菓子屋さんでも
あたりまえのようにプラモデルが売られていたあの頃、
ひときわ異彩を放つパッケージデザインのプラモデルが発売となりました。
白でまとめられたパッケージ全体に漂う、えも言われぬ品格。
まるで本物を見て描いたかのように緻密なメカイラスト。
そう、それはまさしく皆さんご存知の「ザブングル プラモデルシリーズ」でした。
「1/100アッガイ(開田裕治先生作品)」等も含め、
当時からいわゆる「箱絵買い」をしてしまうタイプの子だった自分にとって、
このザブングル シリーズのパッケージ群は
(小学生のボキャブラリーでは)とても言葉で伝えきれないほどの衝撃でした。
長谷川政幸先生や開田祐治先生、
そして故人・石橋謙一先生の手によるすばらしいイラストでした。
長谷川先生は1/100シリーズ全般を手掛けられていていました。
白い箱に映えるイラストでしたね。
開田先生は今もお世話になっておりまして、
マスターグレードシリーズ等、数多くのイラストをお願いしております。
石橋先生に関しましては、画集も持っているほどの熱烈なファンでしたが、
バンダイへの入社タイミングが遅く、
石橋先生とはついぞいっしょに仕事をする機会はありませんでした。
非常に残念です。
1/100クラブタイプや1/144カプリコタイプ等はとくに気に入ってまして、
拙い技術で一生懸命、「あの箱絵と同じように」色を塗りました。
ザブングルの思い出話はまだあります。
当時愛読書だった『コミックボンボン』では、
並行してザブングルプラモのディテール画がUPされたり
出渕裕さんが誌上でザブングル関係のコラム&イラストを描いてたりして、
今まで見てきたアニメとは「何かが違う」作品であることを、漠然と肌で感じていました。
今考えると超コアな裏情報的なものが、
男児ホビーの流行に何も考えずに乗っかってるだけで自然に仕入れられたんですよね。
なんとも幸せな時代でしたね。
限られたお小遣いの中から、ザブングル(とくにプラモ)に投資した金額は
かなりの割合だったと思いますし、
関東在住でしたので土曜日の5時半(今の土6に当たるスイートな時間帯)は、
ビデオデッキを親が導入するまでの数年間、家から出られませんでした(苦笑)。
とにかくザブングルという作品は、
今の自分が形成される大きな因子であったことはまちがいありません。
……と、ここまで思い出話を取り留めなく書いてしまいましたが、
読んでいただいた方々に一部でも共感していただければ本当にうれしいです。
ここから少し専門的な話をします。
今回UPした写真、ザブングルシリーズのパッケージを平板状態と箱組状態で
並べて撮影したのですが、正面をよく見ると何か違っていることに気付きませんか……?
そう、いわゆる「バンダイ赤座布団マーク」が、箱組状態のものには入っていないのです。
(ちなみに、平板のクラブタイプは近年の「再販バージョン」、
箱組みのカプリコタイプは発売当時からの「社内保管サンプル品」です。)
この赤座布団マークは「CI(コーポレーション・アイデンティティー)」の一要素で、
企業の理念や個性を表す重要な要素です。
より正確にはビジュアル・アイデンティティー(VI)と言います。
よっぽどの例外がない限り、バンダイの全商品にこのマークが付きます。
位置やサイズ、配色等ももちろんこまかい規定があります。
では、何故初版の商品にはこのマークがないのかというと……
このマークが制定されたのが「1983年3月」だからなのです。
↓参考ページのリンクです。
http://www.bandai.co.jp/corporate/history80.html
ザブングルはちょうどこの端境期の手前にあったシリーズだったため、
天板にバンダイマークが入らない白箱が実現しました。
しかし直後にCI規定が定まったため、このような変更が発生したのです。
その他にも初版にはなかった「バーコード」が追加になる等、
同じ商品でも販売時期によってこまかい仕様の変更が成されています。
一度完成したデザインに、新たなルールに基づく別のデザインが足されていく……
それぞれのデザインの「アイデンティティー」が、せめぎ合うことになるんですよね。
個性が強いデザイン同士であるほど、
そのせめぎ合いはデザイナーの頭の悩ませどころになるのです。
バンダイマークはバンダイ商品の絶対的とも言える条件だから決断できますが、
完成したものに筆を加えるような行為は本当に勇気がいることなんですよね。
(こういう仕事に就いていると、そのような決断はけっこうあったりします。)
今回のR3ギャリアのパッケージについては、
上述のようなさまざまな経緯や条件、内外のさまざまな意見も踏まえた上で、
目下どのようなビジュアルにすべきか考案中なのですが、
バンダイCIは避けて通れない重要要素ですし、
過去のすばらしいパッケージデザイン群からも目を背けられません。
もちろん、応援してくれている皆さんの期待にも応えたい……
そして担当者の務めとして、
「新発売のウォーカーギャリア1/100プラモデル」としての
しっかりとした「アイデンティティー」を持たせたい。
考えなければならないことはたくさんあります。
この原稿を書いてるあいだにちょっと気が遠くなりそうでした(笑)
過去にVer.KaシリーズやガンダムSEEDシリーズ等の
パッケージ立ち上げに関わってきましたが、今回もひと筋縄では行かなそうです。
でも、最後までがんばって走ります!
デザイン担当 小林幹広